2020年9月13日 礼拝説教「主の心にかなう人」
聖書: 創世記 6章5~8節
Ⅰ.はじめに
日本に住む私たちは「ほかの人と同じだと安心」と思うことが多いのではないでしょうか?まわりの人が正しくないことをしているとき、自分だけが違うことをするのがいやで合わせてしまうことはないでしょうか?
日曜朝の「教会学校」では今、「神に造られた世界」という単元です。これまで、神様がこの世界を造られたこと、最初の人を造られたこと、最初の罪のこと、最初の殺人事件などを、『聖書』からともに聞いて来ました。今日はよく知られている「ノアの箱舟」です。今から約4300年前、紀元前2300年ごろとも言われる本当にいたノアという人が経験したことと、今の私たちとのつながりを、『聖書』から共に見てみましょう。
Ⅱ.みことば
1.悪がふえることと神様の悲しみ(創世記 6章5~8節)
『聖書』は66の本や手紙などの集まりです。その最初の本の「創世記」には、神様は最初の人アダムとエバを「神のかたち」に造られたと書かれています。「神のかたち」とは何か?それは「神様がどんなお方かを表わすかたち」です。自由に考え、行動し、選ぶことができ、しかも、神様に聞き、神様にお話しし、神様を愛することができる性質が「神のかたち」と言えるでしょう。アダムとエバは、神様を愛して過ごしている間は幸せでした。しかし、ある日、神様の命令を破り、神様を愛さないことを選んでしまいます。神様との間には壁ができ、「神のかたち」はなくなりませんが、大きくこわれてしまいました。その影響は子どもや孫に広がっていきました。神様を愛さず、神様に聞かなくなると、私たちは必ず「自分が中心」という生き方になります。自分さえよければいいと思い、ほかの人を大切にできなくなります。こうして人の悪がどんどん増え広がっていきました。
それを見た神様はどう感じられたか?5~6節を読みましょう。それほどに神様は悲しみ、心を痛められたのでした。そして「わたしが創造した人を地の面(おもて)から消し去ろう」(7節)と決意されます。しかし、そこに一つの希望の光がありました。8節を見ましょう。ノアという人です。「主の心にかなっていた」とはどういうことでしょうか?神様の心を知ろうとし、自分をその心に合わせようとしたということではないでしょうか。
2.ノアに告げられた神様の計画(創世記 6章9~22節)
ノアという人はどんな人でしょうか?「正しい人」「全き人」「神とともに歩んだ」(9節)とあります。「全き人」とは欠点がなく罪を犯さないということではなく、多くの人が神様に従わない中で、神様を愛し、神様に従おうとしていたということです。ノアは失敗してもごまかさずに神様におわびして、神様に従おうとし、神様から離れなかったのでしょう。
このノアに告げられた神様の計画とは、どんなことでしょうか?
それは、一つには、神様がすべての人や地上の生き物を、大洪水によって滅ぼそうとしていることです(13,17節を見ましょう)。
もう一つは、そこからの救いのために「箱舟」を造るようにということです(14~16節を見ましょう)。ノアとその家族、すべての生き物のオスとメス2匹ずつが「箱舟」に入り、自分たちと動物たちの食べ物も「箱舟」に運び入れるように言われたのでした(18~21節)。
「箱舟」とはどんなものでしょうか?5年前のクリスマスに高原幸男先生という牧師をお招きしました。先生は長年研究し、ノアの箱舟の150分の1の模型を造り、持ってきてくださいました。その時の資料がありますので、興味のある人は1階の集会室でご覧ください。先生の計算では「箱舟」の幅は25mでこの会堂の幅よりも広く、高さは15mでこの会堂の屋根よりも高く、長さは150mでここから近くの「湯里の森公園」ぐらいまでの大きさになります。形は今のタンカーと似ており、最も安定する船の形だそうです。
ノアは神様からこう言われてどうしたか?自分がノアだったらどうでしょうか?色々な疑問がわいてくるかもしれません。たとえば「そんな大洪水が本当に起きるの?そんなに大きな「箱舟」をどうやって造るの?」とか「材料はどうするのか?すべての生き物を2匹ずつ、どうやって集めるのか?」などです。実際にはノアはどうしたか?22節を読みましょう。非常に印象的です。多くの人々とは違っていても、あざけられても、ノアはすべて神が命じられた通りにしたのでした。神様とともに歩むとはこういうことでしょう。
3.救いのチャンスと大洪水(創世記 7章1~24節)
「箱舟」が神様の言われた通りに完成し、神様はノアに家族と一緒に「箱舟」に入るように言われました(1節)。それは大洪水が起こる7日前で(4節)、ノアは家族とともに箱舟に入りました(7節)。神様は必要なことを、そのつど知らせてくださいます。だから、すべてのことがわかっていなくても大丈夫です。すべての種類の動物たちを2匹ずつ「箱舟」に入れるというむずかしくてややこしい作業も、動物たちの方がオスとメスの組になってやって来て、「箱舟」の中に入り、ノアの所までやって来ました。神様が命じられることはできないことではなく、従おうとすれば、あとは神様の導きや助けがあるのです。
7日後、雨が降り始めます。人々はいつもの雨と思ったでしょう。しかし、その雨はやまず、40日40夜、降り続きます(12節)。ノアとその家族とすべての種類の動物たちの2匹ずつは「箱舟」の中に入り、主がうしろの戸を閉ざされました(16節)。大雨はやがて大洪水となり、「箱舟」を押し上げ、それは浮き上がりました(17節)。こうして、ノアたちは救われ、他の人々はすべて、動物たちも死に絶えたのでした(21節)。
ノア以外の多くの人々に、救いのチャンスはなかったのでしょうか?高原先生は「箱舟を造るのに40~60年はかかっただろうし、多くの人々を雇って一緒に造ったかもしれない」と言います。当然、その人々に神様のことばを伝え、「箱舟」に一緒に入ろうと言ったでしょう。人々は「箱舟」が出来上がっていく様子を見て、なぜ造るのかをノアに聞くこともできたはずです。また、多くの動物が「箱舟」に乗り込んでいく様子も見たでしょう。しかし、人々はそれらの「救いのチャンス」を自分のために生かさなかったのです。
Ⅲ.むすび
今の時代に「主の心にかなう人」とはどんな人でしょうか?それは、罪を犯さない人ではなく、罪をゆるされた人です。自分の罪を認め、イエス様を救い主と信じ、罪をゆるされ、神様の子ども、神様の家族とされることが、「箱舟」に入ることと重なります。今週、神様の心をお聴きして、その心に沿って過ごしましょう。世の終わりのさばきの日までに、私たちの身近な人も、イエス様によって神様の家族とされるという「箱舟」に入れるように祈りましょう。
(記:牧師 小暮智久)